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ノジコの鳴き声を収録しに富士山に(二日目)

ノジコの鳴き声調査の二日目。ノジコの囀りの鳴き始め時刻の確認はできなかったものの、ノジコは北富士の演習場以外で4個体見つけることができました。また、囀り続けるノジコの声でノジコだと分かる距離を求めるとおおよそ135mだったので100m離れていてもノジコと分かるでしょう。ノジコはこの5月下旬にはパートナーがいると昼はあまり鳴かないのかもしれません。
230522|ノジコの囀り認識距離調査

北富士のドーンコーラス

3:40に調査地に着きドーンコーラスとノジコの鳴き声を待ちます。場所は前日ノジコが見つかった場所です。ホテルから20分と離れておらず移動も今日は楽です。林道から見上げると木々の隙間から星が見えます。

森の中で上を見上げると、葉っぱの隙間から広がる星空が目に入る。闇夜に浮かび上がる星々は、小さな光の点たちが闘争を繰り広げているようにも見える。静寂に包まれた森に立ち込める幻想的な空気が、心を奪う。そこには星降る森の魔法が宿っているのだろう。(流行のchatGPT回答より:依頼文「森の中で上を見上げて、星空が葉っぱの間から見える光景を村上春樹風に200文字で表現して。」)

ここは野生の森の中、熊などの接触事故を無くすため車から離れないで耳を澄まします。

3:40 現地到着

3:53 ホトトギスの声がこだまします。コルリが散発的に鳴き出しました。

3:54 ハシブトガラスが鳴き出しました。

4:07 キビタキがよく囀ります。

4:13 ドーンコーラスが始まったと感じる

4:23 日の出時刻

6:50 観察終了

見聞きした鳥たち


観察場所:山梨県林道滝沢線

観察時間:2023-05-22 3:40~6:30

天気:晴れ

標高:1130m位

観察者:大坂英樹


  1. コルリ
  2. キビタキ
  3. フクロウ
  4. カッコウ
  5. ホトトギス
  6. ハシブトガラス
  7. ヒガラ
  8. トラツグミ
  9. ツツドリ
  10. クロツグミ
  11. ヤブサメ
  12. メボソムシクイ
  13. センダイムシクイ
  14. ウグイス
  15. イカル
  16. ノジコ
  17. アオバト
  18. シジュウカラ
  19. エナガ
  20. ビンズイ
  21. ミソサザイ
  22. ホオジロ
  23. メジロ

メジロは同じところに留まって長く鳴いています。

目的のノジコの声は実は最初気が付かなかったのでした。明るくなってから歩くとノジコの声がしました。少し位置がずれていたのでした。測ると82歩。一歩が75cmなので61.5mズレていたのでした。鳴き出し時刻はわからなかったですが、録音はきちんとできました。そして森の中でノジコの声は何m離れたら人には認識できるのだろうということを思いつき実験することにしました。

ノジコの囀りは何m先まで認識できるか?

実験は簡単です。ノジコが同じ場所で鳴いているのを確認しながら聞きづらくなった場所をGPSで確認するだけです。もちろん地形の音響を反射する状況やノジコの囀る高さ、ノジコの顔の向き、他の鳥たちや虫の出す音などで変わるでしょう。でも、調査方法として気がつく距離の目安は得られるはずです。

道を挟んでノジコは西に20mぐらい離れたアカマツの頂上付近で囀っています。直線的な道だったのですが、GPS座標から計算するとおおよそ135mがノジコの認識できる距離だとわかりました。Google earthに聞こえる聴こえない場所のGPS座標を入力して距離をメジャーに測って求めました。ノジコの囀り座標は目分量です。高さも20mと入れました。100mぐらい離れていてもノジコが鳴いていればノジコの囀りと認識できる距離とわかりました。

車などで移動している時にノジコを見つけられるか?

次に車で移動している時に速度が幾つならノジコを見つけられるのか、を考えてみたいと思います。

ノジコが囀りを車で移動しながら認識できる速度を求める

ノジコが囀りの間隔をT0T_0[sec]、ノジコの声と認識できる距離をLL[m]、車の移動速度をv0v_0[m/sec]とする。囀り間隔間にノジコの囀りを見つけられる最高移動速度を求めてみましょう。

移動速度は、

v0=MΔt v_0=\frac{M}{\Delta t}

ここでΔt\Delta tは半径Lの円の中に車がいる時間で、それより囀りの間隔T0T_0が短ければ声を認識できるので、

T0<Δt T_0 < \Delta t

という条件を課せばいいことになります。また、三平方の定理から L2=H2+(M2)2 L^2=H^2+(\frac{M}{2})^2 で整理すると、 v0<2L2H2T0 v_0<\frac{2\sqrt{L^2-H^2}}{T_0} となります。

今、H=0H=0LL=100[m]とし、囀り間隔をT0T_0=10[sec]すると20m/s(=72Km/h)が出てきます。ちょっと感覚に合いませんね。

実際は車の走行音が雑音になり、SNR(信号雑音比)を悪化させるのでこんなに速度は出せません。実感覚は20km/h程度ではないでしょうか。

走行音が小さな車例えば自転車を選べば、もう少し速度を出せそうです。

ノジコの発見した個体数

話を戻してノジコを見つけられたか録音できたかですが、環境音を聞きながら他の林道を走ると他に三ヶ所見つけることができました。北富士で見つけられたノジコの個体は結局4個体でした。でも朝も遅くなるとノジコは鳴かなくなるのでしょう、録音は十分ではなかったです。長く鳴かないのです。多分ですが、パートナーがいるオスは時間が進むと鳴かなくなるのではないでしょうか。昼鳴くのはメスを探している個体なのかもしれません。メジロも昼鳴くのはメスを探している個体だということですから[1]。

ノジコの声の録音は簡易パラボラを使いました

写真の通りパラボラを65cmのコンビニ傘を使いました。この透明のビニールはノジコの囀りの音域をうまく集音するのでSNRを向上させるのに役立ちました。断面積1.65[m^2]とICレコーダのマイク断面積の2000倍ぐらい広くなっています。30dBぐらいですね。そこまで性能向上はないですが。ノジコの声を自動認識させたかったのでSNRを高く取りたかったのでこんな録音方法にしました。

コンビニ傘は簡易的なパラボラマイクになります

本当に集音するでしょうか?この傘の軸を太陽に向けて透かして見ると太陽光を傘の反対面が反射していることがわかります。その中にICレコーダがあります。つまり、反射音がICレコーダに届いていることが間接的にわかります。マイクは持ち手のところに反対向きにテープで固定していますが、雨降ったら傘に、車に戻る時は傘を畳んでもICレコーダも移動するので素早い傘の開閉動作が可能です。音はちゃんと密閉型のヘッドフォンで確認しています。

太陽を面で反射する傘

参考文献

[1] 橘川 次郎 2004, “メジロの眼―行動・生態・進化のしくみ”

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created: 2023-05-21 18:51:30
modified: 2025-02-07 18:21:14
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