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アマチュアがプロの殺し屋達をやっつけるヒリヒリ感が最高
アマチュアの皮を被ったCIA職員がプロの殺し屋たちを知恵と執念で追い詰めていく『ザ・アマチュア』。ラミ・マレック演じる主人公は復讐に燃える素人か、それとも冷徹に感情を演じる手練れか——観終わったあとにその“演技”の奥行きに気づいて、思わずもう一度観たくなる。ヒリヒリした緊張感が好きな人にはおすすめ。おすすめ度
##⭐️⭐️⭐️(3/5)
映画『ザ・アマチュア』感想と考察
あらすじ
映画『ザ・アマチュア』は、テロリストに婚約者を殺されたラミ・マレック演じるCIA職員チャールズ・ヘラーが、自らの手で復讐を果たそうと危険な任務に挑むサスペンス・アクションです。CIAの上司の塩対応に怒りを覚えた彼は、極秘情報を盾にテロリストを追い詰めていきますが、次第に組織の裏切りや陰謀に巻き込まれていきます。
物語は、復讐に燃える「アマチュア」の苦悩と成長を描きながら、巨大組織の闇を暴いていく展開です。正義と人間性の狭間で揺れる主人公の姿が印象的に描かれ、復讐劇を超えた正義と復讐の意義などを問いかけるドラマでです。しかし、実は「アマチュア」を演じる手練れのエージェントではないかと試聴後に疑義を抱かせるような味いの深い作品です。
批評と評価
- 『ザ・アマチュア』(原題:The Amateur)は、1981年のカナダのサスペンス映画でロバート・リテルの同名小説(日本版は『チャーリー・ヘラーの復讐』)を映画化したものが1作目にあります。
- 2025年版に対するアメリカの批評家の意見は賛否が分かれています。多くのレビューが「ラミ・マレックは型破りなアクションヒーローとして魅力的だが、物語は既視感が強く、感情的な深みに欠ける」と指摘しています(Rotten Tomatoes)。Varietyも「マレックは頭脳派の復讐者を好演するが、映画はゲーム的で感情の切実さが薄い」とし、主人公が知恵で敵に立ち向かう点や配役の妙は評価されつつも、全体としては「観やすいが印象に残りにくい」と評しています。
- また、The New York Timesは「序盤はスリリングだが、後半は平板で、主人公と妻の関係性の描写が浅い」と述べ、復讐の動機や物語の説得力に物足りなさを感じる批評が目立ちます。総じて、ラミ・マレックの演技やサスペンスの構成は評価される一方、感情移入のしづらさや脚本の深みに対する不満がアメリカの批評家の主な意見です。
1981年版:ジョン・サヴェージの演技とキャラクターの描写
- 1981年版では、チャールズ・ヘラーはCIAの暗号解析官であり、現場での経験はありません。彼は婚約者を殺害された復讐心から、CIAを脅迫して現場任務に就きます。その行動は、訓練不足や現場での戸惑いをリアルに描写し、観客に彼の無力さや葛藤を伝えることに成功しています。このアプローチは、「素人がプロの世界に踏み込む危険性」という物語のテーマを強調する効果を持っています。
2025年リメイク版:ラミ・マレックの演技とキャラクターの描写
2025年のリメイク版では、ラミ・マレックがチャールズ・ヘラーを演じています。彼はCIAのデータアナリストであり、妻をテロリストに殺害されたことをきっかけに復讐を誓います。上司を脅迫して暗殺者としての訓練を受けたうえで、犯人を追い詰めていきます。
彼の行動は、冷静さと計算高さを兼ね備えており、単なる素人とは言い難い印象を与えます。自身の能力を隠しながらも、目的達成のために一貫した行動を取っており、「アマチュアらしさ」すら意図的に演出している可能性があります。
感想
- アマチュアCIAエージェントが、プロの殺し屋達を殺していくという設定が斬新で、アマチュアゆえに人殺しの倫理と行なった懺悔と後悔・苦悩がヒリヒリとして伝わってくる緊張感のある映画でした。
- 見どころは復讐する相手ごとに手近な武器と知恵で対峙していくところに、脚本のアイディアが光ります。
- 婚約者の幻影を見るとか、大きな緊張での嘔吐する、眠れないなんかはステレオパターンですがリアリティある反応なんだろうなと思いました。それを乗り越えても妻の無念を晴らしたいと想いの強さはもう少し説明があってもよかったかな。
- ヘラーは機密情報の持ち出しとか緊張で大汗かきますが、録画されていることを計算した演技だった可能性もあると思いました。このヘラーはいつもこういう場合はどうするとイメージトレーニングしていたのでしょう。その上で自分の限界がどこで、相手が自分をみくびることを相当理解していたことになります。その上での計画だったはずです。
ヘラーの演技とキャラクターの考察
チャールズ・ヘラーは、デスクワーク専門の暗号解析官で、フィールドワークの経験はありません。妻の死をきっかけに復讐心に駆られ、CIAの訓練を受けて現場に出ることになりますが、行動は次第に過激さを帯びていきます。彼の姿は、復讐心と正義感に突き動かされた結果であり、単なる演技ではなく、内面的な変化を映し出していルように見えます。
さらに、物語の終盤で明かされるCIA内部の陰謀や裏切りは、ヘラーの行動が個人的な復讐を超え、組織の腐敗に対する告発であることを示唆します。彼の選択は、正義と復讐の境界線を曖昧にし、観客にこの戦いの意味を問うように思います。
しかし、ヒリヒリする緊張感を表していたのは演技の一部だった可能性もあります。最後の決闘のシーンでは相当先まで展開を読まないと仕掛けられないトラップもありました。また、IQが高いのに入手した敵のスマホの電源を入れぱなしにして自分の位置がバレることに気が付かないなんてあり得ません。これはそう見せかけてたとも解釈できます。
最後のシーンは妻からのパズルに対応する主人公の心情を表していたのでしょうが、もう少し捻りがあってもよかったかな。パズルの謎解きが終わったメッセージが実は婚約者の計画的な殺人だっでその殺される予感からダイイングメッセージをわたしたとかだと、さらに面白かったでしょうね。
及第点は、ヘラー役のラミ・マレックの振る舞いが実は手練れの仕込んだ演技だったかもしれないと思わせること。もう一度見たくなりました。
残念な点は、音楽と音響です。心情をサポートする音楽はマイナー曲がループしていて、ずーとエンドロールまで流れている感じで起伏が少なかった。音と音空間に敏感ではない映画でした。
総じて、振り返りをしたとき、もう一度見たくなるいい映画でした。
以上