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カルガモと一緒にいたオシドリの正体を考えてみた
今朝、山に囲まれた農地と住宅街を2時間かけて歩くと、幅5mぐらいのヨシの茂る川からオシドリが雌雄2羽飛び立ち、近くの杉林に向かいました。ここから5〜6km離れたところにオシドリの繁殖地があるのが知られており、繁殖分布を変えたあるいは広げているのかもしれません。この川では冬季にもオシドリがカルガモといるのを何度も観察しているので、留鳥なのは違いないと思われます。4月にも夕方二羽で別の山に入っていくのをみたことがあります。観察日:2023-05-11
観察者:woodie
オシドリの繁殖期分布変化
全国鳥類繁殖分布調査報告書[2]でも繁殖分布を広げていることがわかります。
引用:https://bird-atlas.jp/news/bbs2016-21.pdf
オシドリの繁殖ステージ
バードリサーチニュース[4]、バイオームの記事[5]によると繁殖ステージは、以下の様です。
- オシドリは、越冬中の1月から3月につがいとなる。
- 4〜5月頃に巣作りを行います。巣は、大木の樹洞に作る。
- 巣作りは主にメスだけで行い、オスはメスが卵を生むまではメスの周りにおり、他のオスが来ないように見張る。
- メスだけが抱卵し,抱卵期間中は早朝と夕方に採餌のため巣を離れる.抱卵期間は30日前後。
- メスが抱卵を始めるとペアを解消する。また、6月上旬オスの換羽が始まるころにはつがいが 解消する、とある。
- メスは30日弱抱卵し、生まれた雛は、翌日には、時に10m以上もある樹洞から飛び降りて歩いて水辺まで移動します。
- ヒナは6月中・ 下旬に孵化し,40日間ほどメスと幼鳥の家族群で行動し独立します。
メートガードは抱卵開始までとあるので、カルガモといた雄はペアの雌が抱卵を開始したのかもしれません。5月中旬の今はペア解消にはちょっと早い気もしますが。
オシドリ雄とカルガモのペアがまだいた
川の合流点近くでは別のオシドリのオスがカルガモと一緒に飛翔し着水しました。冬季から続くオシドリとカルガモの仲良し中間なのかもしれません。生態から推察すると、このカルガモと行動を共にするオシドリ雄はオシドリの雌を獲得できなかったフロータなのかもしれません。
オシドリの性比は台湾の調査[3]では成鳥で2:1と2倍雄が多く、はオス6に対してメス4でので、繁殖期のこの時期あぶれオスの可能性がかなりあります。
オシドリの雛の性比は変わらないのに成鳥になると雄が増えるは
(台湾の調査では)メスの死亡は春から秋にかけて多くなっており、この時期のメスは、ヒナを連れている
換羽後の飛べない時期に単独でいる(オスは換羽後群でいる)
つがいのオスによる防衛がないこと
が、高い死亡率の原因ではないかと指摘されています。また
- 冬季の餌場の力関係や抱卵以降の雌をメートガードしないため
も指摘されています[3]。
もっと興味深い可能性はカルガモとオシドリの異種間ペアかもしれません。他のカモでも観察されており、カルガモとマガモ雌では交尾まで観察されています[6]。
同種ペアと異種ペアを見かけただけですが、オシドリも調べてみるとさまざまな性戦略を繰り広げていることがわかります。オシドリなどの鳥達を見るのはとても知的で愉快な体験です。多くの人に観察から得られるこの知的で素敵な推察の喜びを分かち合いたいです。そして知識をアップデートするのが大切ですね。
参考文献:
以上です。