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トリルラボも若手生態研究者を応援したいな

トリルラボでは鳥学通信:「若手生態学者が見ている世界 -研究者支援写真展-」を見て若手生態研究者の研究をサポートすることにしました.鳥類の長時間音声分析に特化したサービスですが、よろしければ、学生〜ポスドクの皆さん使ってみてください.
若手生態研究者の応援

経緯

toriR Lab.では こちらの記事を見て若手生態研究者の研究をサポートすることにしました.鳥類の長時間音声分析に特化したサービスですが、よろしければ、学生〜ポスドクの皆さん使ってみてください.

  • 対象:学生〜ポスドクの方

  • 無償利用コース:toriR Enterprise Course(36万円相当、商用利用可)

  • 無償利用期間:2023年1月〜2024年3月末まで

  • 人数:5名

  • 応募要項:書式自由ですがA4半分〜一枚程度のpdf.

    1. 研究タイトル
    2. 研究目的
    3. toriRの利用目的
    4. 予定成果
  • 応募期間:2022年12月末日

  • 審査方法:応募多数となった場合は審査にて決定いたします(審査者:慶應大学清水拓海特別研究員、バードリサーチ高木憲太郎 理事、福井自然史博物館出口翔大 学芸員、トリルラボ大坂英樹 代表)

  • 条件:

    1. 成果物に本支援のことを触れて下さい
    2. 不具合や改善点教えて下さい
    3. 本ページの明記事項以外はtoriRの利用規約とプライバシーポリシーに準じます

2022年若手生態研究者応援プログラムの募集を締め切り、2件を採択いたしました

おめでとうございます。

  • 採択支援
    1. 日比野 薫さま(人間環境大学):「鳥類から見る植樹地管理」
    2. 江指万里さま(北海道大学 ):沖縄島のフクロウ類 3 種の分布を声の録音から解明する

採択支援1:「鳥類から見る植樹地管理」 日比野 薫(人間環境大学)

研究目的

日本は、国土面積3,780万haのうち森林面積が2,508万haと約3分の2を森林が占める世界有数の森林国である[1]。森林のうち約4割に相当する1,020万haは人工林である[1]。日本の人工林は同一樹種が同一時期に植栽されているため、森林構造は天然林に比べて単純である[2]。そのため、天然林に比べ人工林の野鳥種の多様性が乏しい。

森林性鳥類は、昆虫や種子を食べることによって樹林の成長や生産性に大きな影響を及ぼし、バードウォッチングなどの対象にもなるなど、我々に生態系サービスを提供している。人工林の拡大に伴う鳥類の減少により低下した生態系サービスを回復させる手段として、人工林の広葉樹化が行われている。しかし、人工林の広葉樹化・植生多様化が鳥類相に及ぼす影響は未だ検証されておらず[3]、そうした事業の科学的評価が求められている。そこで、本研究は森林の広葉樹化が鳥類相にどのように影響するのかを検証する。それをもとに、よりよい事業の在り方に提言を行う。

toriRの利用目的:愛知県岡崎市東河原町にある植樹地、針葉樹林、広葉樹林に計15地点の調査地を設け、地点ごとにICレコーダー1台を設置し、長時間録音を実施する。toriRは、録音できた鳥の鳴き声の同定に使用する。

予定成果:針葉樹林を伐採し、植えたばかりの植樹地になるにつれ利用する鳥種が減り、植樹後の落葉広葉樹の生育に伴い、種数が増加するという結果が得られると期待される。こうした広葉樹化による鳥種の減少と増加の詳細な動態に基づいて、事業の間隔や規模について提言が行えるものと期待される。また、得られた成果は学会発表、学術論文等としての公表が期待される。

toriRの利用目的

愛知県岡崎市東河原町にある植樹地、針葉樹林、広葉樹林に計15地点の調査地を設け、地点ごとにICレコーダー1台を設置し、長時間録音を実施する。toriRは、録音できた鳥の鳴き声の同定に使用する。

予定成果:針葉樹林を伐採し、植えたばかりの植樹地になるにつれ利用する鳥種が減り、植樹後の落葉広葉樹の生育に伴い、種数が増加するという結果が得られると期待される。こうした広葉樹化による鳥種の減少と増加の詳細な動態に基づいて、事業の間隔や規模について提言が行えるものと期待される。また、得られた成果は学会発表、学術論文等としての公表が期待される。

引用文献

[1]林野庁(2022)令和3年度森林・林業白書.農林統計協会,東京.

[2]小林茂雄,藤巻裕蔵(1985)落葉広葉樹林とカラマツ人工林における繁殖期の鳥類群集.Tori34:57-63

[3]白井聰一(2018)針葉樹林ギャップ地を落葉広葉樹林に再生する過程における鳥相の変化:録音によるデータの収集.日本鳥学会誌,67(2):227–235

採択支援2:「沖縄島のフクロウ類3種の分布を声の録音から解明する」江指万里(北海道大学)

研究目的:

この研究は、沖縄島に生息するフクロウ3種の分布域を声の録音により解明する事を目的とする。

沖縄島には、オオコノハズク、リュウキュウコノハズク、アオバズクの3種のフクロウ類が生息している。これらは北部では同所的に生息しているが、中南部の分布は十分には解明されていない。特にリュウキュウコノハズクは、那覇などの南部からの標本はあるものの、近年では中部以北にしか分布していないとされており、保全の観点からもその分布域や南限の解明が急がれる。

3種は全て夜行性であり、目視による分布調査は困難である。今まではスピーカーを用いたプレイバック法で分布調査を行ってきたが、繁殖行動に悪影響を及ぼしかねない事、大きい音を流すため民家が近い場所などでは実施が困難であるという問題点があった。そこで、様々な箇所にICレコーダーを設置し、一晩中録音をすることで、3種の生息の有無を確認する。このことで、より広範囲で少ない労力で、効率的に3種の分布域を解明する事ができる。

toriRの利用目的

長時間録音のデータ解析には大きな労力が必要である。申請者は過去にはRavenLiteのソフトウェアを用いて音声の有無や声紋の確認を行ってきた。本ソフトウェアは音声解析の機能が充実しているものの、得られた情報のアノテーションや抽出の機能は不十分であり、録音の日時や場所との紐づけなどの用途には向いていないと感じてきた。そこでtoriRを用いることで、より多くのデータを視覚的かつ直感的に、録音場所や音声の種類などと併せて扱えると期待している。また、フクロウ3種はそれぞれ複数種類の声(オスメス別のテリトリーコール、警戒音、交尾声など)を持つため、声の種のみならずその属性までも記録できるのは非常に魅力的である。

さらに、沖縄島で夜間や早朝に録音を行っていると、対象種のフクロウ3種以外に、天然記念物のヤンバルクイナなど数多くの種の声が得られる。これらの音声もデータを蓄積して適切に公表する事で、他研究者への情報提供を行えればと考えている。また、申請者を含む研究グループは沖縄島の小学校や地域住民とも積極的に交流を行っており、2022年はフクロウ3種を紹介する授業や交流会なども行った。toriRや録音データを紹介する事で、普段馴染みのない夜行性の生物を「声」を通じて、知って興味を持ってもらうきっかけを作ることにも活用したい。

予定成果

広域的かつ長期的な録音データをtoriRを用いて整理することで、目視やプレイバック法のみでは十分な解明が難しい3種の分布情報を得られることが期待される。また、3種は繁殖時期がずれており、時期によって得られるデータ量が異なると考えられる。ICレコーダーの予約録音を用いることで、調査員が毎回出向くことなく長期的なデータを安定的に取得する事ができるため、一年を通しての声の頻度や種類について議論する事が可能になる。

Article Info

created: 2022-05-12 12:09:01
modified: 2023-08-23 17:50:36
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keywords: 支援 音声 分析

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